概要
英語読みでは、squeegee(スクウィージー)です。スクリーン印刷において、版(メッシュ)の上のインキを押し付けるものです。
素材は硬いゴム(ウレタンゴムが主流)で、それを金属板で挟んでいます。昔は、それを手で押し付けて印刷していました。今は機械で上下させ、前後移動させる印刷機で印刷を行っています。紙、電子基板、プラスチック板、布等にインキを転写して印刷を行っています。他にメタルスキージと言われる、金属(ステンレス)のスキージが有りクリームハンダペーストで電子基板に部品をハンダ付けする工程に使用されています。
スキージの役割
スクリーン印刷工法でスキージは、版の上で適度な圧力を加えインキをスクリーン紗の開口部に押し付けながら移動することにより、インキがメッシュ目に充填されその後、印刷物とスクリーン版が離れる 版離れの際に版離れと同時にインキが押し出され印刷されます。
スキージがスクリーン版を移動することにより印刷物が連続的に版離れを行いますので、インキが均一に塗布されます。スキージが悪いと、塗布膜厚みのバラツキ原因となり、ピンホールやムラ等の発生原因となります。
スキージの材質及び印刷適正
一般的に素材はウレタンゴムが主流です。インキ、印刷パターンによりスキージの材質、硬度、腰、先端形状を選定します。
- 材質:ウレタンゴム、耐溶剤性ウレタンゴム、超耐溶剤性ウレタンゴム、擬似シリコンゴム、樹脂系スキージ、金属スキージ
- 硬度:硬度は、60~90度が一般的で特殊な硬度もあります。
印刷される線画が細かい場合は、硬度の硬いスキージを使用します。塗膜厚みが必要な場合は、柔らかいスキージを使用します。
先端の真直度が出ていないとスキージ先端の当たり方や、印圧のバラツキが発生します。スキージを研磨する場合、スキージ全体の真直度が必要です。先端形状に関しても、エッジが悪いと印刷の縦スジやムラが発生します。
スクリーン印刷条件でのスキージの適正
スキージ印圧
スキージを印刷時に上から押さえる力をスキージ印圧と言います。印圧はスキージと印刷物を均一に密着させ、印刷部以外へインキが漏れないようにします。印圧を減らすとスキージがスクリーン版のテンションに負けて印刷物へ適正な印圧が掛からなくなる為、インキのカスレが発生する可能性があります。
印圧を増すとスキージゴムが変形してアタック角度が増す為インクの吐出量が多くなりますが良い印刷条件とは言えません。過度の印圧は、スクリーン版にダメージを与え寸法精度に悪影響を及ぼします。
スキージの押し込み量
スキージを押し込む場合に、スキージが下に移動しようとする限界点の位置を言います。スキージの押し込み量が印刷物の表面より下に無いと、適切な印圧力が掛からずに印刷不良の要因となります。但し印圧制御の機構が無い印刷機の場合は、押し込み量で印圧のコントロールを行います。
過度に押し込みを多く設定すると、スクリーン版の破損の要因となります。印圧制御の機構が有る印刷機の場合(エアー調整機構付きや、自動印圧機構付き)は、設定した印圧によりスキージが変形した状態で限界点に達しない程度の押し込みが適正です。
スキージ取付角度
スキージ取付角度はスキージホルダーを固定する際の取付角度を言います。印刷機での設定は、固定部を緩め回転させることにより角度調整し固定します。
スキージアタック角度
スキージアタック角度はスキージがスクリーン版と、印刷物に接触した状態でのスキージ接触部分の角度を言います。印圧によりスキージが変形しますのでスキージ取付角度とスキージアタック角度は異なります。硬度の低いスキージや腰の弱いスキージを使用する場合でもスキージが変形します。
実際のインキの充填力はアタック角度により決定しますので、スキージ取付角度を設定した後スキージの二次的変化にも注意してスキージアタック角度を設定します。印圧、押し込みを設定した状態で アタック角度の条件を設定する必要があります。
スキージ速度
印刷時にスキージの移動するスピードをスキージ速度と言います。インキが版の開口部に充填され印刷物に落ち込む時間となります。スキージ速度によりインキの吐出量の微調整を行うことが出来ます。速度が早いとインキの充填不足による印刷の欠け、ピンホールの発生の要因となります。速度が遅いとインキの滲み、印刷塗膜のバラツキが発生する要因となります。
高粘度のインキ、ベタ付きのあるインキ、ファインパターン印刷、厚膜仕様のスクリーン版、版離れが悪い等で、スキージ速度を遅くする場合が有ります。速度を早める際にはスキージがインキをしっかり充填するように印圧を高める必要があります。速度を遅くした場合、スキージがスクリーンの開口部のインキを掻き取ってしまう為、版上のインキが少なくなりますので印刷塗膜は薄くなります。
スキージスイング、スキージワイパー
印刷する上でインキコート時にスキージからスクリーンメッシュ開口部へインキが落ちると、印刷のムラが発生します。
上記の現象を防止する機構としてスキージスイング機構、スキージワイパー機構等の特別仕様を搭載している印刷機もあります。